海水魚・サンゴ飼育に関するよくあるご質問にお答えします。
海水魚飼育の基礎
Q. 海水魚飼育は難しいのでしょうか?
金魚など淡水魚を飼った経験がある方の中には、水質管理や水槽の立ち上げなど海水魚特有の概念に漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、海水魚飼育の正しいポイントさえ抑えれば海水魚飼育は決して難しいものではありません。
むしろ未経験者の方が「難しそう」という先入観にとらわれず素直な気持ちで取り組めるでしょう。これを機に初めてのあなたも海水魚飼育に挑戦してみてはいかがでしょうか。
Q. 海水魚を飼うのに必要な海水はどこで手に入りますか?
日本ではほとんど人工海水に頼っています。島から天然の海水を宅配する場合もありますが一般的ではありません。人工海水は水道水に人工海水の素を加えて作成します。
Q. 海で海水を汲んできてそれを水槽に使用できますか?
もちろん可能です。人工海水と同様、常に適正な水温を保ち水質管理に気を付けましょう。
Q. 水温はどれくらいで飼育すればよいですか?
一般的には25~27度が適正な目安となりますが、飼育する魚によって適温は変わりますのでご注意ください。
深い海に生息している魚は低めの温度を必要とします。
また、季節による気温変化に伴い水温が変化してしまう場合がありますので、ヒーターやクーラーなどを利用し一定の温度を保つことをお勧めします。
飼育を考えている生体の適温が分からない場合は、アクアラボまでお問い合わせください。
Q. 塩分濃度(比重)はどれくらいが適当ですか?
比重値1.020~1.023程度が適正です。水と人工海水の素の割合については基本的に各メーカーの指示に従うことをおすすめしますが、1Lの水に35gの塩分が溶けているのが目安と覚えておくと良いでしょう。簡易比重計はメーカーによって誤差があるので注意が必要です。
水槽の立ち上げ・準備
Q. 水槽に砂を敷いた方が良いのでしょうか?
見栄え重視であれば敷いても良いですが、砂を敷かない方がメンテナンスが簡単です。
砂を敷く場合、パウダー状の細かい砂を厚めに(5~6cm程度)敷いているのをよく見かけます。しかし、砂の中はゴミが溜まりやすく、ゴミが溜まると水質が悪くなる原因となります。底面ろ過を行ったり、ベントスゴビーなど底そうじ・コケ取りをしてくれる生物を入れたりすれば多少は軽減されますが、メンテナンス方法を知らない初心者はベアタンク(砂を敷かない状態)をお勧めします。
Q. 海水水槽の立ち上げにはどれくらい期間が必要ですか?
水質が安定するまでは最低でも1ヶ月程度かかります。飼育を始めた初期の段階では、水質検査を行いアンモニアと亜硝酸が検出されなくなるまでは水換えをこまめに行うことが重要です。
Q. トリートメントとは何ですか?
新たに購入した魚をメインの水槽に入れる前に1~2週間ほど別の水槽(トリートメントタンクと呼ばれる)に入れ、病原体駆除や餌付けを行う作業のことです。薬浴を行うことで他の魚に病原体が移るのを防ぐのが主な目的です。薬浴に用いられる殺菌薬の中でも、日本動物薬品株式会社製のグリーンF系統は特に有名です。
海水生体
Q. 購入した魚がなかなかエサを食べてくれません。
主に以下の三つの原因が考えられます。
- 魚とエサの相性が良くない
種によって食べるものが異なるだけでなく、エサの大きさが不適切で食べれないといった可能性もあります。 - 魚同士の相性が良くない
魚同士に立場関係ができていて、弱い魚が拒食状態になっているかもしれません。 - 魚の健康状態に問題がある
以前はよく食べていたのに食べなくなってしまっているのであれば、それは何らかの異常のサインかもしれません。
Q. クマノミがなかなかイソギンチャクに入りません。
クマノミとイソギンチャクには相性があります。購入の前に仲の良い組み合わせを調べることをおすすめします。ただし個体差があり、クマノミがイソギンチャクに興味を示さなかったり、イソギンチャク以外のものに入ったりといったことも起こりえます。相性はあくまで通説とお考えください。
Q. カクレクマノミはどのイソギンチャクに入るのですか?
Q. クマノミがペアになっているか分かりません。
クマノミはペアになるとメスはオスよりも体が大きくなります。二匹が仲良くしていて体の大きさに差が現れているようであればペアになっている可能性が高いと言えます。逆に、エサを与えるときに喧嘩する、一方が他方をイソギンチャクから追い出すといった行動が見られる場合は仲が悪いのかもしれません。
Q. 時間帯によって魚の色が変わります。
病気の疑いがなければその魚の性質によるものかもしれません。例えば、眠るときに体の色が変化する魚は多く存在します。これを警戒色と呼びます。
Q. 混泳できる魚とできない魚の違いは何ですか?
それぞれの魚が何を食べるかが一つの大きな判断材料になります。組み合わせ次第ではある魚が別の魚を捕食してしまったり、与えるエサの種類が統一されていないと特定のエサしか食べなくなってしまったりといった不具合が起こりえます。
その他にも、縄張り争いが起きたり、泳ぐ速さの違いがストレスになったりなど、魚の習性・特徴の違いに起因するトラブルは様々です。基本的には単独飼育が無難であり、混泳させたい場合はそれぞれの魚の性質をよく理解した上で行ってください。
メンテナンス・水質管理
Q. 水換えはどのくらいの頻度で行うべきですか?
飼育を始めた初期の段階では、水質検査を行いアンモニアと亜硝酸が検出されなくなるまでは水換えをこまめに行ってください。
魚のみを飼育する場合、水槽内のバクテリアの力だけで水質を維持できるようになれば頻繁な水換えは不要であり、蒸発した分を足す程度でも問題ありません。サンゴやスポンジを飼育している場合は出来るだけ頻繁な水換えが必要となります。諸説ありますが、硝酸塩(バクテリアの活動によって亜硝酸塩が変化したもの)が魚には無害でもサンゴにとっては有害であるためと言われています。
Q. 水槽の海水は透き通っていて綺麗なのに水質検査をすると異常値が出ます。
異常値が出るのは、バクテリアが十分に活性していない証拠です。水槽の大きさや形によっては水の濁りに気が付きにくいことがあります。水槽を普段と違う角度から見ると実は濁っていたというケースもあるようです。
Q. なぜバクテリアは必要なのですか?
生体の排泄物やエサの食べ残しからは有毒な物質であるアンモニアが発生します。バクテリアはアンモニアを亜硝酸塩へ、亜硝酸塩を硝酸塩へと分解し無毒化する能力があるため、水質を守るためにバクテリアは不可欠なのです。
Q. コケの防止策を教えてください。
水道水に含まれるリン酸塩はコケの成長を促進します。RO水を使うことで大きく抑えることができます。コケを食べる貝や魚を一緒に飼うのも良いでしょう。『海水水槽のコケ取り屋さんにはどんなものがいますか?』もご覧ください。
また、光を必要とする生物(サンゴなど)が他にいない場合に限った話ではありますが、光を遮断し成長を抑制するのが最も手っ取り早く効果的な方法です。
Q. 水槽の内側に茶色いコケが大量発生しています。どうしたら良いですか?
拭き取って掃除をしてください。ただし、貝などコケを食べる生物が水槽内にいる場合は、ある程度それらの生物に任せて、気になる時だけ掃除するようにしましょう。過剰な掃除でコケ取り屋さんたちが餓死してしまっては本末転倒です。
Q. 海水水槽のコケ取り屋さんにはどんなものがいますか?
貝類ではシッタカガイの仲間が代表的です。岩についたコケを食べるハギの仲間もおすすめです。
Q. 水槽の内側のガラス面に0.5mmぐらいの白い小さな生物がたくさん動き回っています。魚やサンゴに悪影響はありますか?
ミジンコの仲間かもしれません。特に悪影響はありませんが、気になるようでしたら取り除いてください。
海水魚の病気
Q. 病気を予防するために出来ることはありますか?
新しい魚がやって来たら、他の魚と同じ水槽に入れる前に別の水槽で1~2週間程度様子を見ましょう。詳しくは『トリートメントとは何ですか?』の項もご覧ください。まず病原体を持ち込まないことが重要です。
また、水槽周りの清掃・整備をこまめに行ってください。特にろ過装置の異常は病気が蔓延する原因となることが多いと言われています。
Q. 白点病とは何ですか?
白点虫と呼ばれる寄生虫によって引き起こされます。発症すると魚の身体に白い点に覆われているように見えます。観賞魚には非常に頻繁にみられる病気で、重症化すると魚を死に至らしめます。白点虫は常に魚に張り付いているわけではないということ、また感染していてもすぐには発症しない場合があることが早期発見を難しくしている要因です。水を介して感染する性質があり、気付かない内に感染した魚を持ち込んでしまい水槽全体に蔓延するケースがよくみられます。
Q. 白点病の治療法を教えてください。
市販の白点病治療薬をご利用ください。治療薬の殺菌効果でサンゴやライブロックに付いている微生物まで死滅してしまうことを避けるために、感染している魚は別の水槽へ移してください。硫酸銅を用いた治療法も知られていますが、硫酸銅は劇薬指定されていますので専門家以外は使用厳禁です。
白点虫は仔虫が魚に寄生して成長し、繁殖のため魚から離れてを繰り返します。常に魚に張り付いているわけではないと同時に、治療薬の効果があるのは魚に寄生する前の仔虫の段階のみです。すなわち、白点が一時的に消える時間に薬を散布するのを何度か繰り返し、最低でも4~5日かけて白点虫の数を徐々に減らしていくことになります。
Q. 白点病が完治したから魚を水槽に戻したいのですが、戻したらまた白点虫に寄生されてしまいますか?
白点病は水を介して感染するため、ろ過装置を含め水槽全体から撲滅しなければまた感染してしまいます。ろ過装置が複数の水槽と繋がっていて、ろ過装置を通じて伝播してしまうケースも見受けられます。また、『白点病の治療法を教えてください。』の項で解説した通り、一時的に白点が消えたのを『白点病が治った』と勘違いしてはいけません。
海水器具
Q. 照明のルクス(lux)、ルーメン(lm)、ケルビン(K)とは何ですか?
ルクスは光源自体の明るさではなく、光が到達した地点での明るさを表します。この値が高いほど照明が明るいことを示しますが、光源から離れるほど光が届く量は減るため、実際の明るさは水槽の大きさに依存します。
ルーメンは光源から放出される光の量の単位です。この値が高いほど照明が明るいことを示し、照射される面積によってルクス値は変化します。
ケルビンは光の色を表す単位で、この値が低いと赤色・高いと青色に見えます。明るさには関係しない値ですが、人間の視覚では太陽光に近い6000K付近が最も演色性(自然な色味に見えること)に優れ、明るく見えると言われています。
照明を購入する際は、光の明るさ(ルクスまたはルーメン)・色味(ケルビン)・ご予算の三点を基準にご検討ください。
Q. メタルハライドランプ・蛍光灯・LEDの中で、どれが一番育成に向いていますか?
生物によって必要な光の強さは異なるということが重要です。メタルハライドランプは蛍光灯よりも浸透率に優れ、水槽の奥まで光が届きやすいという理由から、蛍光灯の明るさで十分な生物も存在する一方で、好日性サンゴをはじめとする強い光を必要とする生物に限ってはメタルハライドランプが必須となります。
最近はLED照明が徐々に普及しつつあり、好日性サンゴなどにはより強力な光源を用いることで対応する例も散見されます。しかしながら、未だに国内では良いものが手に入りづらいのが現状です。
いづれにしても、強力な照明になるにつれ価格も高くなる傾向にあります。
Q. 照明器具は1日何時間点灯するのが適切ですか?
基本的には自然界の太陽の動きに合わせて昼夜のサイクルを作ると良いでしょう。タイマー付きのLED照明を使うと便利です。
Q. 照明を点灯する時間が長すぎたり短すぎたりするとどうなるのでしょうか?
魚は他の動物と同じように日照時間に則して活動している、サンゴや藻類(いわゆるコケ)など光合成を行う生物は光を十分な時間浴びせなければ成長出来ないという原則は忘れないでください。しかし、生活習慣の問題で多少変わってしまうのは仕方がないでしょう。極端な環境変化が無ければあまり大きな影響はありませんので心配し過ぎることはありません。
Q. RO浄水器で作ったRO水は飲めますか?
飲めます。RO浄水器とは、逆浸透膜を利用し化学物質や細菌を取り除く浄水方法です。市販の飲料水にも使われています。
サンゴ・イソギンチャク・無脊椎動物
Q. 「ソフトコーラル」と「ハードコーラル」の違いを教えてください。
「ソフトコーラル」は石灰質の骨格を持たないサンゴで、岩などに張り付いて生活しています。一方「ハードコーラル」は「ミドリイシ」をはじめとする骨格を持つサンゴです。
Q. サンゴを育成するには光が必要とききました。どういった照明器具が必要ですか?
サンゴは好日性と陰日性の二種類に分かれます。ほとんどのサンゴは好日性であり、光合成のために光が必要です。陰日性のサンゴは光合成を行わず、代わりに物理的な栄養源が必要です。
サンゴの成長を促すには光が強いほど効果が期待できます。光の色味に関しましては、育成が最優先であれば太陽光に近い6500Kから10000K程度が最適ですが、サンゴの蛍光タンパクの色を楽しみたい場合は15000K以上の青みがかった光を選ぶのも良いでしょう。『照明のルクス(lux)、ルーメン(lm)、ケルビン(K)とは何ですか?』もご参照ください。
Q. イソギンチャクのエサはどうすればよいですか?
口がキュッと閉まっているか確認しましょう。触手が垂れ下がって口を大きく開けたままの個体は元気がない可能性があります。
また、手で触れて反応を見るのも有効な手段です。健康なイソギンチャクであればつっついた途端に動き出すこともあります。
Q. イソギンチャクが以前と違う場所に移動しました。
イソギンチャクが移動すること自体は珍しいことではありません。また、イソギンチャクが水流でろ過槽に吸い込まれるなどといった事故を防ぐため、排水口・吸水口にスポンジを被せるなどの工夫が必要です。
Q. イソギンチャクが岩に着きません。浮いてしまいます。
イソギンチャクは本来岩などに吸盤のように張り付いて生活しています。どこにも張り付かず漂っているのは元気がない証拠かもしれません。
Q. イソギンチャクが元気か確かめる方法はありますか?
口がキュッと閉まっているか確認しましょう。触手が垂れ下がって口を開けたままの個体は元気がない可能性があります。また、手で触れて反応を見るのも有効な手段です。健康なイソギンチャクであればつっついた途端に動き出すこともあります。
Q. 元気がなくなったイソギンチャクを復活させることは出来ますか?
水換えを行うことで改善するかもしれません。しかし、イソギンチャクは体の構造が単純で、一度悪くなってしまうと回復が難しいです。
Q. スポンジを維持するにはどうすればよいですか?
こまめな水換えを行うことが重要です。また、スポンジは光合成を行わず、水から養分を得る(これを陰日性という)ため、水槽内に栄養源を供給する必要があります。スポンジは維持は難易度が高く、初心者にはあまりおすすめ出来ません。ミドリイシやサンゴの飼育を習得しているレベルになってから挑戦することをおすすめします。
ライブロック
Q. ライブロックとは何ですか?
ライブロックとは、『ライブ』=『生きている』・『ロック』=『石』という意味で、石に海中生物が付着したものを指します。様々な微生物が潜んでいて、それらは立ち上げる水槽の生態系を作る助けとなります。ただし、ヒトデやシャコが成長しサンゴを食べてしまうといった悪影響を及ぼす例もまれにあるようです。
Q. ライブロックにミミズのような生物が付いています。これは生体に害がありますか?
ミミズのようなものは「ゴカイ」の仲間などであり特に害はないと思われます。
Q. ライブロックのキュアリングとは何ですか?
キュアリングとは、ライブロックを使用前に別の水槽に入れ、腐りやすい部分や余計な生物を取り除く作業を意味します。ただし、キュアリングを行うと有益な生物まで失われてしまうリスクもあります。良質なライブロックであればキュアリングは不要と考えて良いでしょう。詳しくは『ライブロックの選び方を教えてください。』の項をご参照ください。
Q. ライブロックの選び方を教えてください。
匂いや見た目を観察してください。質が悪いものはカイメンが腐敗して白いカビのようになっていることがあります。悪臭がするもの、腐敗して白くなっているものは避けた方が良いでしょう。